動物たちへの政治家の態度について(議事録から)

拝啓
政治家の仕事は立法によって社会の課題を解決することだと思いますが、立法に至るまでの過程を知ることは、意外と難しいことのように思います。そんな時、ある政治家がどんな分野に関心があり、またどの程度その分野に精通しているか、想いがあるかなどを知るため、議会での政治家の発言をまとめた議事録を確認することなどは、その方法の一つと云えるのではないでしょうか。

今回、震災後のペット動物や家畜動物が置かれている状況についての政治家の態度を確認するため、幾つかの議事録に当たってみました。対象とした政治家は国会議員、福島県議会議員、福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域に位置する地方自治体(9市町村)の議員、以上です。

国会議員は「国会会議検索システム」(http://kokkai.ndl.go.jp/)を、福島県議会議員や9市町村の議員については、各自治体のホームページに載せられている議事録を確認しました。ただし、福島県南相馬市田村市は詳細な議事録が載せられていましたが、浪江町双葉町大熊町富岡町楢葉町については、議員の発言要旨を記載した「議会だより」や「議会報」があるのみでしたので、そちらを参照することにしました。また、葛尾村川内村については議会の議事録も発言要旨もなかったことから議会事務局へ確認したところ、「役場へ来てもらえば議事録の閲覧は可能」とのことでした。今回はその確認にとどめ、議事録または発言要旨がホームページ上で公表されている議会のみを対象とすることにしました。

期間は昨年3月の震災発生から12月までに行われた議会や委員会で、「動物福祉」や「動物愛度」の観点からの、被災動物への災害対応を問う質問を探してみました。そうしたところ、国会議員では15名、福島県議会では2名、南相馬市議会では1名が質問を行っていました。国会を会派別に見ますと自民党から8名(吉野正芳議員、谷公一議員、馳浩議員、赤澤亮正議員、長島忠美議員、江藤拓議員、岩城光英議員、石破茂議員)、民主党から3名(金子恵美議員、城島光力議員、高邑勉議員)、社民党から2名(吉泉秀男議員、阿部知子議員)、公明党から1名(石田祝稔議員)、共産党から1名(紙智子議員)が質問に立っていました。
つづいて地方議会ですが、福島県議会では2名(甚野源次郎議員、本田朋議員)、南相馬市議会では1名(小川尚一議員)が、質問を行っていました。党派別に見ますと甚野議員は公明党、本田議員は民主党、小川議員は南相馬市改革クラブと、みな異なります。

こうして見ると、国会では自民党が8名の質問者と圧倒的に多いのですが、野党第一党として政府・民主党の災害対応を糺すというその役割や各党間の議員数比率を考えた時、特別に多いと云うほどのことでは無いように思います。むしろ、地方議会も含めた印象として感じることは、党派や会派以前に議員個人の想いや知識の有無が、議会での質問につながっているということです。一般的に、どんな社会的課題についてもそうだと思いますが、議員の質問は党や会派としての総意の関心から行われると云うよりも、議員個人の関心から行われるということが、こと動物問題についても当てはまるのかも知れません。

今回の調査は、議会での質問内容のみを対象にしたものですから、それだけで政治家の動きのすべてを把握することが出来ないことは云うまでもありません。質問するだけの人、質問して行動もする人、質問はせず行動のみする人、質問も行動もしない人など、議事録には載らない議員の行動が様々あるだろうことは、容易に想像が出来ます。したがって、これだけで何かが云えるものではありません。それでもただ一つ、気になったことを云えば、警戒区域内に位置する9市町村の中で、動物のことを議会で取り上げた議員が南相馬市議会の小川尚一議員ただ一人しかいないということです。9市町村の議員定数を合計すると150人近くになりますが、その中で動物の窮状を議会で取り上げた議員が、本当に1人だけなのでしょうか。
先に書きましたように、9市町村の内5町は「議会だより」などからの議員の発言要旨を確認したもので、また2村については議員の発言をまったく確認出来ていないのですから、私の調査が正確を期したとはとても云えません。どこかで、鋭い質問や粘り強い提案を行っている議員がいるのかも知れません。そういう議員がいれば、ぜひお会いしてみたい気もします。

とは云え、やはりこの数字には心許なさを覚えます。動物たちへの政治家の態度について、もう少し調べをつづけて行こうと思います。

                                                     敬具

平成壬辰 睦月二十六日
宍戸 大裕