命、つながる

拝啓
62頭の牛たちの命が、救われました。
【FarmArcadiaのブログ(http://ameblo.jp/farmarcadia/)】より転載。

6月18日の緊急声明から3日。この間、牛たちを守ろうとする人々の姿を追いつづけていました。その中のひとりの女性は獅子奮迅、牛の殺処分を回避するため昼夜を問わずに粘り強い動きをしていました。今日、牛の殺処分がなくなった瞬間に彼女が流した涙は、本当にすばらしいものでした。

動物にかかわる人に限らず、一般に云えることとして思うことがあります。それは、本当に真面目に問題に取り組んでいる人、誠実な人は、自分が動いた結果出てきた「成果」など誇らないし威張らない、いつも謙虚でただ問題の解決だけを考えて行動しているということです。

世の中にはその逆の人も、少なからずいます。

自己顕示欲に燃え他者に向かって自分の「手柄」を誇る、人を利用することばかりを考え嘘と巧言令色で塗り固める、人の行為(例えば上記の女性の動き)を、まるで自分のなしたことのように騙る。嘘のような本当の話です。

  「子曰く、泰伯は其れ至徳と謂うべきのみ。三たび天下を以て譲り、民得て称するなし」 
  (『論語』・泰伯第八)
  
周の大王の長子・泰伯は当然天下を受け継ぐべき身でありながら、その地位を固辞して末弟へ天下を譲り、世の人はその譲ったということすら誰も知らず、褒めるものはひとりも無かった。それが泰伯の至徳たるゆえんである、と『論語』にあります。

「巧言令色鮮ないかな仁」と云い「剛毅木訥は仁に近し」と云います。

本当に動物たちのことを思い、動物たちの方を向いて活動している人は、後者のような人たちです。剛毅にして、朴訥。胸を熱くさせるようなひたむきさで邁進。至誠の人はいつも言葉少なく、圧倒的な行動を以て言葉に代えていく。そのことを改めて実感したこの3日間でした。

                                                   敬具

平成壬辰 水無月二十一日
宍戸 大裕