クマゴロウ、帰る

映画の中で紹介しましたSORAの犬、クマゴロウ。
6月1日をもってSORAを卒業し、福島市に新しい家を建てられた飼主(Sさん)の元へ帰ることになりました。
飯舘村の全村避難から3年あまり。Sさんのお宅は帰還困難区域に指定され、戻る見込みが立たないため移住をお決めになったそうです。

SORA卒業1週間前のきょう、クマゴロウは新しい家に行ってみました。飼主さんとのツーショット。クマゴロウはとても安心しているように見えました。
飼主さん曰く「昔は車が通るだけでも吠えてたけどずいぶん落ち着いたみたい」。
原発事故、そしてSさんと別れて暮らしたSORAの3年間がどんな時間だったのか、クマゴロウにマイクを向けてインタビューをしてみたくなりました。


  


しかし、ホッとした一方で福島の厳しい現状も感じました。

Sさんとクマゴロウのツーショットの背後に写る青いビニールシート。これは、家を建てる時敷地を除染した土。
すでに居住をはじめてらっしゃる家の庭に、いまだに行き場の決まらない除染土が残る。
こんな異常さに直面しながら、異常を日常として生きなければならない福島の人と動物たちがいることを、改めて思い知らされた気がします。

帰れたから、よかったね。では済まない事態がいまも続き、これからも続いていくであろうことを、そしてそこに暮らす人と動物がいることを、僕は思い知りたいと感じます。

福島を「そこ」としか明示できず、「ここ」と言うことのできない距離をいつも感じてしまうのですが、「そこ」としか言えない距離から言えること、言うべきこともあるはずだろうと思いながら、何かをいい続けたいと思います。「そこ」は「ここ」でもあるのだから。

クマゴロウ、Sさん、クマゴロウを支えてきたSORAスタッフの皆さんに、心から「お疲れさまでした」のひとことを伝えたいと思います。

   
  

平成甲午皐月二十五日
宍戸 大裕