昭和20年夏の人びと

高見順の「敗戦日記」を読みはじめてから、日記の面白さにますますはまりこんでいる。
昭和20年、夏。日常はつづいている。空襲警報が毎日のように鳴る。「こっちへ来るかなと準備すると、新潟へ行ったとラジオの情報」。川端康成久米正雄の名が出てくる。川端や久米の日記があるか、あればその日のことをどう書いているかが気になりはじめる。

6月15日。新聞に鈴木貫太郎首相誕生の記事が載り、それについて高見が書く。「この首相は、誠実ではったりのない感じが国民に好印象を与えているようだが、それだけまた迫力に乏しい憾みがある」。

その時の、鈴木首相の日記があるか。日記がなくても感想をどこかに書いているか。木戸幸一日記にはどうあるか。昭和天皇は何か言葉を伝えたか。

その日、前線にいた兵士の日記には何が書いてあるか。何が書いてなかったか。まだ子どもだった人びとの、日記はあるか。どんな日常が書かれてあるか。

昭和20年夏の人びとの日記を集めたい。それを読みたい。


平成乙未 水無月七日
宍戸 大裕