昭和20年夏の人びと−その弐

『木戸幸一日記』上下を手に入れることが出来た。例によって、高田馬場の古書街にて。 店から店へと歩いていると、文芸春秋から出されたドナルド・キーンさんの『作家の日記を読む 日本人の戦争』(角地幸男訳)という本も見つけ、購入した。こちらは買わず…

昭和20年夏の人びと

高見順の「敗戦日記」を読みはじめてから、日記の面白さにますますはまりこんでいる。 昭和20年、夏。日常はつづいている。空襲警報が毎日のように鳴る。「こっちへ来るかなと準備すると、新潟へ行ったとラジオの情報」。川端康成や久米正雄の名が出てくる。…

笑われる人

前回の日記の終わりに、高見順の1945年5月31日の日記の言葉― 人にバカにされたいと思ったら、――人をバカにしないこと。を書きました。どこかにメモをしていたのですが、いまそのメモが手元になく、あやふやな記憶頼みになりますが森田草平もまた、 人を笑う…

きょう・あす・きのう−高見順1945年

あす、31日に東京原宿で「犬と猫と人間と」「犬と猫と人間と2」「動物たちの大震災 石巻篇」の上映会をしてくださるnekonokoさんのお手伝いに、夜から会場づくりをしている時、地震が起きました。ちょうどスクリーンを掛ける柱を、ひとりで左右片方ずつ持ち…

調和と不調和と

沖縄を離れて2週間あまり。つよい余震をおさえおさえて映画の編集に向かい合う日々。「風は生きよという」の再編集に取りくんでいる。中野重治が著書の中で「アンバランスを失うということ」について書いていた。いわく、バランスを失うとは言うが、アンバラ…

沖縄順不同

三上智恵さんが監督された映画「標的の村」の続篇、「戦場ぬ止み」(いくさばぬとぅどぅみ)の試写会に行ってきた。 素晴らしいのひとこと、では収まることができない。噴出する感情をどうにも抑えようが無い。仕事が手につかない。困る。困った先から間欠泉…

遠い島

きょう、翁長沖縄県知事と菅官房長官が初めて対談した。知事は就任当初から官邸との対談を要望していたが、4ヶ月が経ちようやく実現した。「上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れ、怒りは増幅していくのではないか」と知事が話し…

編集ノオト

ある御縁から、東京の一隅で映画の製作をはじめてもうすぐ1年になる。撮影はそろそろ大詰めを迎え、編集もようやくかたちがみえる予感がするまでになってきた。こういう時期がとっても愉しい。 昼も夜も、ひとりで部屋にこもって映像を眺めている。いつもお…

君自身どう対したか

中野重治の小説『五勺の酒』。読み返すたび、五臓に倫理が降りてくる。胴震いがおこる。 「何よりもあれを止めてくれ。圧迫されたとか。拷問されたとか。虐殺されたとか。それは ほんとうだ。僕でさえ見聞きした。しかし君自身は生きているのだことを忘れな…

自分の話がしたくなる

昨日、一昨日と2日間開かれた第8回目となる大倉山ドキュメンタリー映画際。昨日だけ観に行くことができて伊勢真一監督の「妻の病」を観た。伊勢さんの作品が僕は好きで、よく観ている。よく、というのはより良くということでなくしばしばという意味だ。自分…

粛々とは願い下げである

今夕、ポレポレ東中野で上映中の「圧殺の海-沖縄・辺野古」(藤本幸久、影山あさ子監督)を観た(公式HPはこちら http://america-banzai.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html)。 109分。辺野古の海は美しく、海に沈められたカヌー隊の人びとが息を吸うため…

正月の男

漱石の俳句に 正月の男といはれ拙に処すというのがありました。 漱石がたくさん書いた「拙に処す」人びとのありように、ことしも学びたいと思います。 平成乙未 正月 宍戸 大裕

風は生きよという

新年明けましておめでとうございますさっそくですが来月、監督しました映画「風は生きよという」という作品の上映会を 開催いたします。2月1日(日)東京国際フォーラムD5ホールです。人工呼吸器を使いながら、地域で自立生活を送ってらっしゃる方々を描い…

家族

中国へ、と題した記事を書いてからもう4ヶ月も経ってしまいました。 この4ヶ月でふたりの人が「さいきんブログ書いてませんね」と声を掛けてくれました。僕はこのふたりの有難い読者を生涯大切に思います。中国での思い出は書こうと思い中国に旅立ちましたが…

中国へ

岡本喜八監督「江分利満氏の優雅な生活」を、せんだって早稲田松竹で観た。 映画の最終盤、小林桂樹演ずる江分利満が酔っ払いながら、自らの戦中にあった青春を思いながら語る。 しかし、ずるい奴、スマートな奴、スマートガイ。抜け目のない奴。 美しい言葉…

【「犬と猫と人間と2」ニュースVol.14】

****************************** 「犬と猫と人間と2」ニュース Vol.14 2014.7.25 発行 発行:映像グループ ローポジション/合同会社東風 ****************************** - 1.韓国・スンチ…

薩摩訛りは心地いい

川内原発周辺地域にどれ位の犬と猫がいるのかを知りたくて、立地市の薩摩川内市、隣接市のいちき串木野市、阿久根市に電話で聞いてみた。結果については近く発行するメルマガに記します。 その結果もさることながら、印象的だったのが3市の担当者に共通して…

魯迅と藤野先生

中野重治の「四方の眺め」を読んでいたら「花束と国宝」という題の作品があって、魯迅と藤野先生について触れていた。魯迅の「藤野先生」の結びを引用してはじまり縦横に語っている。 魯迅と藤野先生を語りながら、それは魯迅や藤野先生という人間のありよう…

「破片のきらめき」上映会(8/16 せんだいメディアテーク)

8月16日(土)、仙台メディアテークにて「破片のきらめき」の上映会があります。 http://www.geocities.jp/hahennokirameki/トークショーが豪華です。 ひとりでも多くの方に観てもらいたい、とこの作品については素直に思います。 それはきっと僕自身のため…

街に出る

先々週、新宿で行われた安倍政権退陣を求めるデモを撮影してきました。 下記のサイトを見ると、これからも東京を中心にデモは各地で予定されていることがわかります。 http://www57.atwiki.jp/demoinfo/m/ 僕は権力と暴力がきらいです。 人を殺したくないし…

元気で行かう。絶望するな。

6月19日は桜桃忌。『津軽』の最後の一節が思い返されるきょうこのごろ。 私は虚飾を行はなかつた。読者をだましはしなかつた。 さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行かう。絶望するな。では、失敬。そうだその意気。絶望なんてしてる暇も無い。 石破茂…

鹿を馬といいつのる者たち

鹿を馬といいつのっていれば、いずれ鹿は馬になるらしい。 ほんとうか? 石破の本を読むと、石破の考えはわかる。 賛否はおいても、とりあえずわかる。 安倍のいうことは、残念ながらさっぱりわからない。そもそも彼はひとを説得しようとしていない。俺はエ…

茨城のり子展から連想するさまざまのこと

今月はじめ、横浜ジャック&ベティでの音声ガイド付き上映会を終えた足で、世田谷文学館へ行ってきた。4月からはじまっていた「茨木のり子展」を観るために。休日の夕方、閉館1時間前ということもあってか館内は空いていた。 (世田谷文学館HP http://www.se…

クマゴロウ、帰る

映画の中で紹介しましたSORAの犬、クマゴロウ。 6月1日をもってSORAを卒業し、福島市に新しい家を建てられた飼主(Sさん)の元へ帰ることになりました。 飯舘村の全村避難から3年あまり。Sさんのお宅は帰還困難区域に指定され、戻る見込みが立たないため移住を…

【「犬と猫と人間と2」ニュースVol.13】

****************************** 「犬と猫と人間と2」ニュース Vol.13 2014.5.23発行 発行:映像グループ ローポジション/合同会社東風 ****************************** - 1.DVD発売記念イ…

「フツーの仕事がしたい」仙台上映会

土屋トカチさんの映画「フツーの仕事がしたい」が仙台で上映されるそうです。 5/31と6/1の2日間。僕は両日上京中のため観に行けないのですが、とにかく傑作です。 仙台近在の方、ぜひご参加ください。映画の終りにマーガレットズロースの「ここでうたえ」が…

52円の人生

安倍内閣の地金がむき出しになっている。みずからの判断が憲法より上位にあると考える、その思い込みはどこからくるのか。学生時代、自衛隊が主催する学生向けサマーアカデミーに参加した。4泊5日で陸海空自衛隊の各部隊を回った。所沢の入間基地から輸送機…

6/1DVD発売記念上映会&トーク

来月1日、「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」のDVD発売を記念し、横浜のシネマジャック&ベティにて上映会&トークイベントとDVD販売を開催いたします。 日時:6月1日(日)10:00〜 場所:シネマジャック&ベティ (横浜市中区若葉町3-51 京浜急行線 黄金町…

ラジオ出演のおしらせ

あさって、宮城県の地元ラジオ局エフエムたいはく(78.9MHz)の番組、「ほっとすて∼しょん」(半澤かすみさん)に出演させていただくことになりました。 日時:5月15日(木)13:00〜 エフエムたいはく(78.9MHz)http://www.fm-t.net/5月24日(土)に紀伊国…

表現の自由をみずから擲つうつけもの

福島県の行政当局にセンスを感じたことはいままで一度もないのだけれど(センスを感じないこととナンセンスは違うことなのだからそれはいいのだけれど)、今回はナンセンスだった。しかもそれが極まりない。公務員には憲法を守る義務がある(99条)。憲法が…